2018.09.14
2018/9/14 肩関節周囲炎(五十肩、四十肩)について
こんにちは
院長の渡邊です。
本日は五十肩と呼ばれている、肩関節周囲炎を取り上げたいと思います。
五十肩(肩関節周囲炎)は肩の関節が固まってしまって、腕が上げれなくなったり、
後ろに手を回したりすることがつらくなる疾患です。
この怪我で整骨院を受診される患者さんは、かなり多いのです。
肩関節の動かしつらさや痛みを訴えてこられるのですが、
こちらからの治療の方針を説明する上で、以下のことをよく患者さんにお話しします。
「痛みが悪化しない範囲で、関節が固まらないように、動かしてください。」
このように、痛みがあるにもかかわらず、関節を動かしてくださいということを、説明しているわけですが、
患者さんにとっては、非常に苦痛なことを強いることになります。
そこで、五十肩(肩関節周囲炎)が、どういう怪我であるのかをご説明して、
皆様に、どうして痛みがあるのに運動しなければならないのかについてご紹介したいと思います。
よく耳にする「五十肩」という怪我は医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれます。
この「肩関節周囲炎」ははっきりと原因のわかるものもあれば、
いまひとつ原因がはっきりしないものもあります。
肩関節周囲炎が痛みだけでなく、
関節が徐々に動かなくなってしまう状態を「肩関節拘縮」といいます。
そこで、このページでは、肩関節拘縮もしくは肩関節周囲炎の状態で、
どのような日常の工夫が有効なのかを中心に御説明したいと思います。
一口に肩関節拘縮といっても、
以下の表のように分類されます。
原因の不明な場合と、原因がある程度明確になっている場合とに分けられます。
原因として全身性、関連性、肩関節性など診察によって明確になった場合は、
その原因を改善するように処置が施されます。
一方で、はっきりした原因がなくて徐々に肩が動かなくなってしまう場合もあります。
これを一般に「五十肩」といいます。
ですので、表出している症状の時期によって、
治療の進め方が異なってきます。
「そのように説明されてもピンとこない!」とおっしゃる方も多いと思います。
ですので、以下でいわゆる「五十肩」の時期における治療についてご説明したいと思います。
下の絵は肩を前から見た図です。
ピンク色で示した部分が主に「五十肩」で押さえた時痛い部分です。
上の図のように、一か所ではなく、数か所にわたって痛みがある場合が多く見受けられます。
肩の後ろ側から見た時に痛む部分が上の絵のピンク色の部分です。
肩の関節だけに限らず、肩甲骨や脊椎に近いところまで押さえて痛い部分があります。
肩関節は左の図のような3つの靭帯によって支えられています。
さらに、この周りには筋肉などが存在しています。
左の図の一番下の靭帯は下にc字型になっていて、
腕を下におろしているときにはゆとりがあります。
腕を上げていくときには、
緊張して上腕骨が下へずれ落ちないように支える働きがあります。
ところが、一番下の靭帯が緊張した状態ができると、
動きにゆとりが無くなり、
腕を上げた時に引っ張られるような感じになって、
腕を上げようとすると動かなくなったり、
痛みが生じたりします。
この状態が「肩関節が固まった」状態です。
この緊張がどうして起こるのかはいまだに不明な部分があるのですが、
病理学的に「繊維化」といって硬くなってくるのではないかといわれています。
緊張は1つの靭帯だけに限らず、
他の靭帯や滑液包にも影響が出て、
「瘢痕化」と呼ばれる硬い組織に変化するといわれています。
ですので、肩の周り全体が硬くなってしまって、
「肩関節拘縮」が起こるといわれています。
しかし、肩を動かすゆとりが無くなっているだけで、
骨には異常がありません。
ですので、一般にレントゲンを撮っても
レントゲンは骨だけを写しだすので、
異常は見つからない場合がほとんどです。
では、五十肩にはどのような症状がみられるのでしょうか?
実は五十肩の時期によって症状は変化します。
まず初期の段階「筋痙縮期(きんけいしゅくき)」では
炎症が強い時期であるので、
鋭い痛みが発生します。
その痛みが筋肉のけいれんを引き起こし、
さらに痛みを増加させてしまいます。
ですので、この時期の治療としては、
痛みどめなど、炎症を抑える治療が有効とされます。
痛みが強いこの時期には筋肉を無理に動かそうとして、
筋肉のけいれんを増強してしまうことがあるので、
無理に動かすのはあまりお勧めできません。
上の時期を過ぎると「筋拘縮期(きんこうしゅくき)」がやってきます。
この時期になると、肩を動かした時の痛みは多少和らぎます。
しかし、肩が硬くこわばってしまい、
動かせる範囲が制限されてしまいます。
この時期では肩の痛みが強くならない範囲で動かしていくことが大切です。
日常生活でも、無理な肩関節の動作は避けて、
動かせる範囲で動かしていくことが大切です。
さらに、時期が進んでくると「回復期」へ向かいます。
この時期にリハビリを徹底的に行って、
一早く肩関節の柔軟性を取り戻す必要があります。
回復に向かう時期なので、
リハビリが重要になってきます。
では、それぞれの時期にどのようにリハビリすればいいのでしょう?
左の図の左側にあるように緑の丸の中にある「急性期」の場合には、
筋けいれんが強く痛みも強いでので、テーピングや周囲筋の柔軟性向上で
少しでも痛みを起こさないようにすることが大切です。
慢性期に向かい、肩が動かなくなってくると、
徐々に動かして肩の可動域を広めることが大切です。
この時期になると、痛みも少し和らいでくるので、
温めることも有効です。
慢性期には肩を冷やさないように注意して、
夏の時期でも直接肩にクーラーの風などが当たらないようにしましょう。
また、全身のリラックス効果も含めて、
ゆっくりお風呂に浸かって肩を温めることもお勧めです!
温めるということのほかに、
肩を守るという方法もあります。
この考え方は、腕は肩にぶら下がっている仕組みになっていて、
肩関節には常に腕の重みが負荷になって掛かっていると思ってください。
ということは、この負荷を除去してあげると、
肩は楽になるということです。
ですので、肩に腕の重みや荷物の重みがかからないようにしてあげましょう!
急停車などで、急に握り棒をつかんだ場合などには、
肩に大きな負担がかかります。
こういったときに五十肩の人は、肩に鋭い痛みが走ります。
通勤時にこういったことで痛い思いをされた方も多いことと思います。
握り棒をもつ時などは、
なるべく肘を締めて肘を体に近い位置にして持ってください。
肘を締めることで、引っ張られる力が肩にかかるのを軽減します。
鞄を肩にかけるときには、悪い方の肩に鞄をかけないようにしてください。
手提げかばんや、買い物袋なども、良い方の手で持ってくださいね。
また、キャリーバッグを引くことも肩の負担になります。
押すことができるキャリーバックだったら、
引っ張ることよりも、押すことをお勧めします!
また、御買物のときには、
カートを使用することをお勧めします!
また、物を肩より上の位置に置く時には、
下に台を置いてその上に乗り、
腕が袖口より上に上がらないように注意しましょう!
では、寝るときにはどういった姿勢が楽なのでしょう?
バスタオルなどを2~3回折りたたみ、左の図のように腕の下に置きましょう。
こうすることで、腕の重みで肩が下に引っ張られることを防ぎます。
また抱き枕などを抱えるようにすることで、腕を体の方に安定させ、
肩に腕の重みがかからないようにします。
このように、寝るときにも工夫をしてあげることで、
就寝時の痛みを和らげることができます!
五十肩になると、突然ギックっとした鋭い痛みが肩を走ります。
しかし、どういったときに痛みが生じるのかを考えて、
そういった姿勢や動きにならないようにすることで、痛みの発生を防ぐことも可能になります。
五十肩(肩関節周囲炎)が発症すると、痛みが生じます。
痛みがあるからといって、全く肩関節を動かさないようにしていると、徐々に肩関節は動かなくなってしまいます。
その結果、髪をとく動作や、ズボンの後ろポケットに手を入れるなどの日常生活動作に支障をきたすことになります。
このページは五十肩(肩関節周囲炎)でお困りの方が、少しでも楽になっていただけるようにという思いで作成しました。
五十肩がどうやって発症し、どのような経過をたどって治っていくかなどについて、以下でご説明していきたいと思います。
肩関節の構造
肩関節は鎖骨、肩甲骨、上腕骨の3つの骨から構成されています。
脊柱と連結を持った肋骨から胸骨を介し、以下の図のように胸鎖関節、肩鎖関節、肩甲上腕関節の3つの関節を経て連絡されています。
同時に、肩甲骨は肩関節の動きに伴って肋骨の上を肩甲骨が滑動し、機能的に肩甲胸郭関節を形成しています。
肩甲胸郭関節は、以下の図のように、上肢を挙上する際、肩甲上腕関節の動きに連動し、肋骨の上を肩甲骨が活動します。
肩関節を取り巻く軟部組織(筋肉や滑液包)
全身にある関節の中でも、肩関節は自由度の大きい関節です。
あらゆる方向に自由に動かすためには、骨だけに限らず、その周りに存在する筋肉群や滑液包の働きが必要となります。
このように、肩関節は骨、軟骨を取り巻く軟部組織の働きと、いくつかの関節が共存し合いながら動いていることがわかります。
そこで、筋肉や関節の一カ所でも不具合が生じると、肩関節の円滑な動きが妨げられることで痛みが生じたり、動かし方に異常が生じます。
「こんなに肩が痛いのに、レントゲン写真で異常なしって、どういうこと?」
肩が痛くて整形外科を受診して、最初にレントゲン写真を撮ったら、
「骨には異常はありません」という説明を受けた方も多いのではありませんか?
先の項目でも述べたように、肩関節は、筋肉や滑液包などの軟部組織で取りかこまれています。
五十肩(肩関節周囲炎)では、多くの場合骨や軟骨に病変が生じるというよりも、
軟部組織の病変が原因であるので、骨の変化をとらえるレントゲン写真では、正常な画像として写るのです。
五十肩(肩関節周囲炎)の痛みはいつまで続くの?
五十肩(肩関節周囲炎)は以下の表のように病期分類されています。
炎症期といわれる痛みが強い時期は、2~9ヶ月、拘縮期は4~12ヶ月、回復期が5~24ヶ月と幅があると言われています。
上の表にも示したとおり、五十肩の痛みは各時期によって、原因が違います。
各時期に、施す治療も違ってきます。
このように五十肩(肩関節周囲炎)の痛みが長く続くのを防ぐためには、
今どの病期に当たっているのかを見極めていくことが大切になってきます。
治療に関しては、また別のページで、詳しくご紹介します。
五十肩(肩関節周囲炎)はこうやって固まっていきます!
正常な肩関節の動き
関節包は肩関節の安定性に寄与しています。
以下の図のように、肩を挙上したり、動かすことで伸張されます。
健常な肩関節では、腕を下げていると、関節包の下にゆとりがあります。
腕を上げていくと、②のように関節包は適度に緊張し、上腕骨頭もそれに連動し上方に移動します。
さらに腕を上げていくと、③のように下方の関節包は緊張し上腕骨頭も連動して下方へ移動します。
このように、腕を上げる一連の動作では、関節包の適度なゆとりと緊張がうまく作用して、上腕骨をスムーズに誘導しています。
これが拘縮を起こしていない肩関節の動きです。
拘縮を起こした状態の肩関節
(関節包の緊張による)
以下の図は、関節包の伸張性が低下した状態の肩関節の動きです。
①のように腕を下ろしている状態でも、下方の関節包にゆとりが見られなくなっています。
その状態で、②のように腕を挙上していくと下方の関節包は緊張してしまい、腕を上げられない状態、
つまり肩関節の拘縮がおこってしまいます。
②肩関節周囲筋の短縮(緊張)による拘縮
肩関節の拘縮が起こるもう一つの原因は、以下のように筋肉の緊張です。
以下の図のように腱板の炎症や肩峰下滑液包の炎症が引き金になり、筋肉の緊張が生じます。
肩関節周囲筋周囲の痛みが長引けば、防御反応の悪循環が起こり、
肩の前面に当たる小胸筋や大胸筋、肩の後面に当たる大円筋や三角筋後部繊維、
広背筋、上腕三頭筋長頭などに筋緊張が起こり、肩関節の拘縮が生じます。
このサイクルから抜け出すことが拘縮の改善につながります。
肩関節の拘縮による肩甲骨位置異常
肩関節が拘縮することにより、肩甲骨の位置にも異常が生じます。
以下の図は、拘縮が生じた肩関節において、肩甲骨の位置異常を示したものです。
院長 太田 湧也